臨床室
軟部腫瘍と鑑別を要した非定型抗酸菌感染による手屈筋腱鞘滑膜炎の1例
大野 祐輔
1
,
新井 哲也
,
中島 浩敦
,
高津 哲郎
,
伊藤 茂彦
1岐阜県立多治見病院 整形外科
キーワード:
Amikacin
,
Langhans巨細胞
,
腱移植
,
腱鞘炎
,
MRI
,
鑑別診断
,
軟部組織腫瘍
,
非結核性抗酸菌症
,
Clarithromycin
,
滑膜切除
,
手の筋
,
Imipenem-Cilastatin
,
屈筋
Keyword:
Amikacin
,
Diagnosis, Differential
,
Magnetic Resonance Imaging
,
Mycobacterium Infections, Nontuberculous
,
Tenosynovitis
,
Soft Tissue Neoplasms
,
Giant Cells, Langhans
,
Clarithromycin
,
Cilastatin, Imipenem Drug Combination
pp.534-537
発行日 2016年6月1日
Published Date 2016/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2016299854
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73歳女性。左中指のこわばり、示指~環指のしびれを自覚し、発症後3ヵ月で前腕遠位掌側の腫脹を触れるようになり、発症5ヵ月目に著者らの施設へ受診となった。所見では単純MRI矢状断で前腕遠位掌側に屈筋腱に接するようにT1強調像で低信号、T2強調像で不均一な高信号が認められた。また、横断像では屈筋腱を取り囲むように存在し、T1強調像で低信号の腫瘤に高信号の縁取りを認めた。以上より、本症例は腱滑膜炎や膿瘍、粘液間質をもつ軟部腫瘍を考え、手術が施行された。手術所見では屈筋腱周囲に褐色~桜色調の滑膜増生がみられ、可及的に滑膜切除を行なった。更に長母指屈筋腱の断裂を認めたため、長掌筋腱を用いて移植・再建が行われた。その結果、病理組織学的所見および培養所見より、非結核性抗酸菌感染による手屈筋腱鞘滑膜炎と最終診断された。一方、術後10日目に手指~手の腫脹、瘻孔がみられ、術後6週目に示指~環指の屈筋腱周囲の滑膜切除と屈筋腱剥離を行い、あわせて化学療法としてIPM/CS、AMK、CAMの投与を開始した。すると、術後6ヵ月経過現在、手指には屈曲制限が残存するものの、明らかな再発はみられていない。
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