臨床室
急速に対麻痺を生じた腰椎椎間板ヘルニアによる馬尾症候群の1例
美馬 雄一郎
1
,
加藤 雅敬
,
宇田川 和彦
,
高橋 正明
1国立病院機構東京医療センター 整形外科
キーワード:
X線診断
,
MRI
,
多発性神経根障害
,
脊柱管狭窄
,
椎間板ヘルニア
,
椎弓切除術
,
腰椎
,
対麻痺
,
椎間板切除
,
棘突起縦割法
,
徒手筋力テスト
Keyword:
Intervertebral Disc Displacement
,
Magnetic Resonance Imaging
,
Lumbar Vertebrae
,
Laminectomy
,
Paraplegia
,
Radiography
,
Polyradiculopathy
,
Spinal Stenosis
,
Diskectomy
pp.427-430
発行日 2015年5月1日
Published Date 2015/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2015265139
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72歳男性。誘因なく朝から腰痛、左下肢痛、しびれが出現、その後、左下肢脱力を来し夕方には歩行困難となったため著者らの施設へ救急般送された。所見では明らかな脳神経学的異常や上肢の麻痺もみられなかったが、左下肢徒手筋力テスト(MMT)は右下肢の正常に対して1~2と著明な筋力低下を示していた。一方、頭部CTでは明らかな異常所見はなく、MRIでも胸椎には異常はみられなかったが、腰椎においてL2/3椎間板ヘルニアとL2/3およびL3/4高位での脊柱管狭窄による馬尾神経への圧迫が認められた。以後、患者は来院1時間経過で右下肢にも脱力が生じ、両下肢全体がMMT 1にまで低下すると共に両下肢と会陰部の感覚や肛門反射も消失した。以上より、本症例は脊柱管狭窄症と腰椎椎間板ヘルニアを原因とする馬尾症候群(CES)と診断され、緊急手術として2椎間の棘突起縦割式椎弓切除術と腰椎椎間板ヘルニア摘出術が施行された。その結果、術直後から左下肢のしびれは改善し、術後1週で左下肢筋力全体はMMT 2程度に、感覚はL3-L4領域で約5/10程度に改善した。更に術後8週目には下肢筋力はMMT 3、感覚は約7/10まで改善、最終的に術後9週でリハビリテーション目的で転院となった。尚、目下、術後4ヵ月経過で右下肢の筋力はMMT 4に改善したものの、左下肢筋力はMMT 3に留まっており、両松葉杖で100m歩行が可能な状態である。
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