発行日 2006年2月1日
Published Date 2006/2/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2006128133
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
異なる部位に複数の背髄腫瘍を認めた8症例(男性6例,女性2例,手術時平均57.8歳)を対象に,臨床像と平均観察期間3年10ヵ月の経過を検討した.初診時の主訴は全例が下肢痛または殿部痛であった.明らかな筋力低下は2例に認められ,知覚障害は6例,膀胱障害は2例に認められた.発生高位は頸髄と馬尾に各1個が1例で,それ以外は円錐部以下の馬尾に発生していた.腫瘍の個数は2個が2例,3個が1例,4個が3例,6個が1例であった.全例で症状に関連する大きな腫瘍のみを摘出し,病理組織はAntoni分類でA typeが3例,A type及びB typeの混合型が5例であり,全例が典型的な神経鞘腫であった.頭蓋内病変は2例に認めたが症状がなく小さい腫瘍であったことから経過観察している.末梢神経腫瘍は3例に合併し,いずれも神経鞘腫であった.家族歴,カフェオレ斑,聴神経鞘腫はいずれの症例にもなかった.腫瘍のMRIはいずれもT1強調画像で低~等信号,T2強調画像で高信号,Gdで造影された.ダンベル型を呈した腫瘍を認めたのは8例中2例であった.経過中に新たな腫瘍が出現した症例は2例あり,1例は2個,他の1例では3個の新たな腫瘍が馬尾に発生していた.経過観察中に非摘出腫瘍が増大した症例は2例で,各々9倍,2.9倍に増大したが,この2例の観察期間は6年8ヵ月,12年6ヵ月と他の症例よりも長かったことから,長期観察は必要であると考えられた
©Nankodo Co., Ltd., 2006