発行日 2016年12月1日
Published Date 2016/12/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2017128017
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77歳男性。心窩部痛を主訴に近医を受診、急性胃腸炎の診断で投薬を受けるも症状が改善せず、発熱も伴い始めたため救急外来となった。受診時、血液生化学検査では炎症反応と肝胆道系酵素・膵酵素の上昇を認めた。腹部骨盤単純CTでは胆嚢結石が認められたが、総胆管結石ははっきりしなかった。急性胆管炎、膵炎の診断で緊急入院後、外科に転科となった。CT所見にて門脈左枝には高吸収域を認め、急性期の門脈血栓と考えられた。胆嚢炎と膵炎の保存的加療に加え、門脈血栓症とDICに対する抗凝固療法を開始した結果、心窩部痛は徐々に消失したが、第10病日頃より心窩部痛が再燃し、腹部造影CTを行なったところ、肝円索腫大と上腹部正中線の腹壁直下に至るwater densityを伴う腫瘤性病変を認め、肝円索膿瘍が疑われた。そこで、超音波ガイド下膿瘍部穿刺にて約5mlの膿汁を吸引し、保存的加療を続けた。心窩部違和感は消失し、外来観察で腹部単純CTにて肝円索膿瘍は縮小傾向を認めたため、治療は胆石症に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術と術中評価にて肝円索膿瘍を切除する方針となった。腹腔鏡下所見では肝円索は軽度の肥厚と大網との癒着を認めるのみで器質化が進んでおり、再燃の可能性は低いと判断し、切除せず、単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術のみ施行した。術後は経過に問題なく退院となり、約1年間の外来通院で症状の再燃は認められていない。
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