発行日 2016年4月1日
Published Date 2016/4/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2016316480
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
24歳男性。ソフトボールの試合中に同僚と衝突して、同僚の肘により心窩部を強打、当日深夜より上腹部痛が増強し、受傷7時間後に救急搬送された。受診時、血液検査ではCPK、アミラーゼ、リパーゼ、AST、ALT、LDHなどが軽~中等度上昇しており、受傷15時間後の採血ではアミラーゼ、リパーゼ等は更に上昇した。CTでは膵頭部には造影不良部分が認められ、周囲に少量の液体貯留がみられ、膵実質は半分以上にわたり断裂していると判断した。以上より、本症例は膵損傷分類IIIa以上の膵損傷と診断し、MRCPを行ったところ、主膵管は描出されず主膵管損傷が疑われた。また、ERPでは主膵管は壁不整で膵頭部付近で途絶し、それ以下の尾側膵管は描出されなかった。以後、主膵管の完全断裂を伴う膵損傷IIIb型と診断し、緊急手術が施行された。術中所見では膵は上腸間膜静脈前面の膵体部移行部付近で完全断裂していたが、比較的シャープに離断されており、主膵管も判別可能であった。一方、上腸間膜動静脈には損傷や大きな出血はなく、周囲臓器にも損傷はみられなかった。そこで、術野を洗浄して膵頭側の主膵管を結紮し、膵断端を結節縫合閉鎖した。次いで尾側膵へは主膵管に膵管チューブを挿入して、完全瘻とした上で、膵断端を胃後壁から胃内に陥入、吻合して手術を終了した。その結果、術後は胃膵吻合部で軽度の膵炎が発症したが、患者は術後50日目に退院となった。
©Nankodo Co., Ltd., 2016