発行日 2016年4月1日
Published Date 2016/4/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2016316476
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72歳女性。腹部膨満感と腹部全体の自発痛を主訴に救急外来受診後、腹部単純CTにて内ヘルニアによる絞扼性イレウスを疑い、緊急手術目的で入院となった。血液検査では炎症反応と著明な脱水に伴う腎機能障害が認められ、胸腹部単純X線像では右側心陰影右横隔膜下に胃泡ほか、左横隔膜下に肝陰影を認め、腹部では小腸ガスの拡張がみられた。また、腹部単純CTでは臓器が通常の位置に対して鏡面的位置関係を呈し、絞扼性イレウスが疑われた。一方、回盲部周囲の脂肪織濃度の上昇と周囲の浮腫上変化から炎症を示唆する所見もみられた。以上より、本症例は完全内臓逆位に伴った絞扼性イレウスと診断され、腸閉塞解除術が施行された。術中所見では主に左下腹部に腹水の貯留に加え、左下腹部の回盲部周囲に腸内容物と膿瘍が認められた。そこで、回盲部から上行結腸の生理的癒着部を剥離すると、虫垂に壊死および穿孔が認められた。更に汚染は左右横隔膜下、骨盤底に及んでおり、汎発性腹膜炎状態であり、穿孔性虫垂炎による汎発性腹膜炎であった。以後、虫垂を切除し、腹腔内を洗浄してからドレーンを挿入して手術を終了した。その結果、術後に敗血症の合併があったが離脱でき、術後5日目より飲水開始、8日目より食事摂取開始して、患者は術後14日目に軽快退院となった。
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