発行日 2015年5月1日
Published Date 2015/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2015265078
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10歳男児。左下腹部痛および嘔吐を来し救急外来受診となった。所見では左下腹部から臍下部に圧痛と反跳痛があり、生化学検査では炎症反応の高値が認められた。また、胸腹部単純X線像では右胸心、軽度の小腸ガスを認め、腹部CTでは完全内臓逆位と多脾症、およびDouglas窩に糞石を伴う12mm大に腫脹した虫垂ほか、周囲に少量の腹水貯留が認められた。一方、上腸間膜静脈(SMV)が上腸間膜動脈の右側に位置しており、腸回転異常症に特徴的なSMV rotation signが認められ、総じて完全内臓逆位と腸回転異常症を伴う急性虫垂炎と考えられた。以後、腹腔鏡下虫垂切除術が施行され、術中所見では腹腔内検索により骨盤内には腫大した虫垂、その周囲には少量の混濁した腹水がみられた。だが、十二指腸では水平脚を認めず、下行脚から直線的に下行し小腸となっていた。更に明らかなLadd靱帯はみられなかったものの、肝円索は上腹部正中より右側にあり、かつ左肝葉は著明な腫大を認め、小腸は正中から左側にかけて、回盲部は下腹部正中に、そして上行結腸は正中に、下行結腸は右傍結腸溝に認められた。以上より、本症例はnon rotation typeの腸回転異常症、完全内臓逆位、肝形態異常、多脾症、急性虫垂炎の診断にて虫垂切除術が施行された結果、病理組織学的所見では全層に著明な好中球浸潤を認め、壊疽性虫垂炎であった。尚、術後経過は良好で、患者は術後8日目に退院となった。
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