発行日 2015年5月1日
Published Date 2015/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2015265082
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63歳女性。既往として15年前に右腎細胞癌にて右腎摘出術の施行があった。今回、定期検査で貧血を指摘され、上部消化管内視鏡にて十二指腸下行脚に出血を伴う隆起性腫瘍を認め、精査加療目的で著者らの施設へ入院となった。所見ではHb 3.2g/dlと極度の貧血で、上部消化管内視鏡では十二指腸下行脚内側に長径7cmの易出血性の隆起性病変がみられ、腹部CTでは十二指腸下行脚から膵頭部に強く造影される辺縁平滑な腫瘍性病変が認められた。また、左副腎にも造影効果を伴う辺縁平滑な腫瘍性病変が認められた。以上、これらの所見より本症例は十二指腸腫瘍と非機能性副腎腫瘍の診断にて入院、輸血により貧血是正後に待機手術予定であったが、入院6日目に吐下血を来しプレショック状態に陥ったため、同日、緊急膵頭十二指腸切除術が施行された。その結果、摘出標本では腫瘍は膵頭部から十二指腸管内に平皿状に広がり、7×5cm大で表面には広範なびらんが認められた。一方、病理組織学的所見では15年前に切除された腎細胞癌と同様のclear call carcinomaの所見で、膵転移巣が十二指腸に浸潤したものと考えられた。尚、患者は術後1年2ヵ月目に肺と左腎転移を来し、目下は他医にて集学的療法施行中である。
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