発行日 2012年9月1日
Published Date 2012/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2013031680
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76歳女性。既往として61歳時に左腎細胞癌で根治的左腎摘出術を、67歳時に胃癌で幽門側胃切除術+Billroth-I法再建が行われた。今回、数日前からの黒色便とめまいを主訴に受診、著明な貧血を認め、精査加療目的で入院となった。上部消化管内視鏡では胃切除吻合部から4cm肛門側、Vater乳頭より口側の後壁側に約3cm大の易出血性腫瘤が存在しており、生検では潰瘍組織であった。また、入院後の腹部ダイナミックCTでは早期相で十二指腸から膵頭部と体尾部に強く造影される腫瘍性病変が認められ、中心部には造影効果のない不整な領域を確認、左副腎にも同様の腫瘤が認められた。輸血により貧血は改善したが、1週間後の上部消化管内視鏡では腫瘍の口側縁より活動性の出血がみられ、止血が困難なため緊急手術となった。術中所見では腫瘍と乳頭の距離は25mm程度あり、腫瘍からの出血は止血されており、膵頭部の腫瘍を摘出するため膵頭部と十二指腸を部分切除して残胃とRoux-Y法で再建した。その結果、切除標本の病理組織学的所見ではclear cell typeの腎細胞癌の転移と診断された。目下、術後3年5ヵ月経過で残存病変の増大は認めず、治療継続中である。
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