発行日 2015年5月1日
Published Date 2015/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2015265081
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66歳女性。3ヵ月前から右側腹部皮膚膨隆を自覚、今回、同部の腫脹と蜂窩織炎様の発赤が出現し、腹部CTにて腹壁膿瘍を疑われ入院となった。腹部超音波では胆嚢の腫大と軽度の壁肥厚があり、胆嚢底部から右側腹壁の皮下組織まで連続する低エコー領域を認め、同領域と胆嚢内には音響陰影を伴う高エコー像がみられた。更に腹部造影CTでは胆嚢底部は右側腹壁に連続しており、かつ造影効果を伴い皮下組織に広がる膿瘍腔を形成し、MR胆管膵管造影では胆嚢管は著明に伸展していた。一方、腹壁の膿瘍は皮下に蜂窩織炎を伴い小さく自壊しており、この自壊部を避けて経皮的膿瘍ドレナージを行なうと粘稠の血性膿が排出されたが、膿の細菌培養は陰性であった。しかし、膿瘍ドレナージチューブ造影を行なったところ、膿瘍腔から瘻孔を通じ胆嚢、総胆管が描出され、膿瘍腔と胆嚢内に結石と思われる透亮像が認められた。以上より、本症例は胆嚢皮膚瘻と腹壁膿瘍形成の診断にて、まずSBT/CPZを術前投与し、腹壁炎症の消退後の入院15日目に開腹手術が施行された。術中所見では胆嚢底部は腹壁に穿通し膿瘍を形成しており、腹壁の膿瘍腔を胆嚢底部とともに切除後、膿瘍内の切石と胆嚢摘出術が施行された。その結果、病理組織学的所見では胆嚢粘膜の著明な炎症所見を認めるも悪性所見はなく、患者は術後第10病日目に退院となった。尚、術後20ヵ月経過現在、遺残膿瘍の形成はなく経過している。
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