発行日 2014年12月1日
Published Date 2014/12/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2015122707
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58歳男性。左下腹部痛を主訴に受診、S状結腸憩室炎の疑いで入院後、腹部単純X線像では骨盤内に小腸ガスが認められた。また、腹部単純CT像では骨盤内に糞石と思われる高吸収域が認められたが、腹水はなかった。S状結腸憩室炎が疑われたが、入院翌日、発熱と腹痛が増強し腹膜刺激症状を認め、腹部造影CTを行なかったところ、水平断像では前日認めた糞石と思われる部位の周囲に腹水が出現、加えて上腸間膜動静脈走行の偏位が認められた。更に前額断像では小腸が椎体の右側に上行結腸が椎体の左側に存在しており、本症例は腸回転異常併存急性虫垂炎と診断された。そこで、緊急腹腔鏡下手術を施行した結果、骨盤内には多量の膿性腹水ほか、正中左側の骨盤内に虫垂が認められた。以後、これらの所見を踏まえて虫垂を切離し、生理食塩水3000mlで腹腔内洗浄後にドレーンを骨盤底に留置した。切離標本の病理所見では虫垂根部付近には穿孔がみられ、虫垂壁全層には好中球主体の炎症細胞が高度に浸潤しており、壊疽性虫垂炎であった。尚、術翌日より経口摂取を開始、患者は術後6日目に退院となったが、退院後の精査においてvirtual coronoscopy所見では盲腸は正中の左側に存在し、上部消化管造影所見では十二指腸は水平脚を形成せず、下行脚は直接上部空腸への移行していた。このことから本症例はnonrotation typeの腸回転異常症と考えられた。
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