発行日 2013年9月1日
Published Date 2013/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2013373075
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53歳男性。右鼠径部の圧痛を伴う膨隆を主訴に近医を受診、腹腔内膿瘍を伴う虫垂炎が疑われ、手術目的に著者らの施設へ受診となった。所見では右鼠径ヘルニアに対するメッシュプラグを用いた手術歴があり、メッシュ感染の可能性も否定できなかったが、術後7年も経過した遅発性メッシュ感染は非常に稀であり、膿瘍腔に接するように腫大した虫垂も認められたため、膿瘍形成を伴う虫垂炎と診断された。手術を行ったところ、膿瘍は腹腔内に存在していなかったが、虫垂は発赤を伴い腫大していた。だが、鼠径ヘルニア修復に用いられたプラグ直下の腹膜には虫垂先端が癒着していたため同部を剥離した。その結果、プラグの一部の露出および膿汁の流出が認められた。プラグは周囲と強固に癒着し、摘出が困難と判断し、虫垂切除術を施行後、メッシュ露出部にドレーンを留置して手術終了となった。術後は膿の細菌培養検査にてEnterococcus aviumが認められたことから抗生物質の投与で症状は落ち着いたが、ドレーンからの膿性排液が完全に消失することはなかった。以後、メッシュを核とした感染の遷延と判断し、異物摘出術を施行した。再手術後、経過は良好で、感染の再燃やヘルニアの再発は認められていない。
©Nankodo Co., Ltd., 2013