発行日 2012年10月1日
Published Date 2012/10/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2012371430
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症例は40歳女性で、1週間前から下腹部痛を自覚していたが、前日より増悪し受診した。意識清明、腹部は平坦・やや硬、下腹部に圧痛と軽度反跳痛が認められた。心拍82回/分、血圧121/52mmHg、血中酸素飽和度100%であった。CTで腸管の壁肥厚・拡張、脂肪織濃度上昇が認められた。中等量の腹水、遊離気を認め、肝に多発性低濃度域が認められた。消化管穿孔による急性汎発性腹膜炎、肝腫瘍と診断し開腹した。肝に複数の腫瘤を触知した。腹腔内には便汁が存在し、汚染、炎症は中等度であった。S状結腸に腫瘤を触知した。S状結腸と左卵巣、左輸卵管、子宮が強固に癒着していた。S状結腸腫瘍の潰瘍底が左卵巣を通じ腹腔と交通していた。右卵巣を温存し、S状結腸、左卵巣、左輸卵管、子宮を合併切除した。直腸口側断端と下行結腸断端を吻合し、横行結腸に双孔式人工肛門を造設した。下部消化管内視鏡所見、摘出標本病理組織学的所見から家族性大腸腺腫症(FAP)と臨床診断された。APC遺伝子検査は患者の同意が得られず行わなかった。第29病日に人工肛門閉鎖術、外側区域の転移性肝腫瘍核出術を施行した。経過観察中に左鎖骨リンパ節腫脹、左胸水貯留が出現した。胸水細胞診から左癌性胸膜炎、左鎖骨上リンパ節転移と診断された。根治的治療は困難と判断し、化学療法のため内科へ転科した。
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