発行日 2011年5月1日
Published Date 2011/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2011257495
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59歳男。嚥下困難を主訴とした。入院時の血液検査で貧血と腫瘍マーカーCEAの上昇を認めた。上部消化管内視鏡で食道胃粘膜移行部から胃噴門部小彎後壁中心に約1/4周性の易出血性の、食道へ浸潤する隆起性腫瘍を認めた。上部消化管造影と腹骨盤部CTより小彎リンパ節、左胃動脈幹リンパ節、腹腔動脈周囲リンパ節の有意な腫大を認めたが、肺や肝に転移や、腹水は認めなかった。以上より食道浸潤を伴う噴門部癌と診断し、D2リンパ節郭清を伴う胃全摘術、下部食道合併切除術を施行した。病理組織学的に、高分化管状腺癌と中分化扁平上皮癌の2種類の所見を認めた。潰瘍を含む腫瘍の大部分は高分化管状腺癌であった。腫瘍の肛門側では正常な胃粘膜とそれに連続する高分化管状腺癌が食道扁平上皮癌に被覆されるように存在した。2種類の腫瘍間には組織学的移行像は存在せず、衝突部位では両成分が混在していた。摘出リンパ節は右噴門部リンパ節に扁平上皮癌の転移、左胃動脈幹リンパ節と腹腔動脈リンパ節に腺癌の転移を認めた。最終病理診断は衝突癌であった。術後CTで頸部や上縦隔リンパ節に明らかな転移は認めず、現在は再発の兆候なく経過観察中であった。
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