発行日 2011年3月1日
Published Date 2011/3/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2011177987
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27歳男。患者はマラソン後に嘔吐をが出現、急性腎不全と腹部腫瘤の診断で緊急入院なった。CTでは左上腹部に石灰化を伴う15cm大の腫瘤がみられたが、2週間後の造影CTでは腫瘤は骨盤内に移動し、造影効果は認められなかった。また、腫瘤はMRIでT1、T2強調画像ともに低信号を呈しており、腫瘤は確定診断には至らなかったものの悪性が疑われた。そこで、第31病日目に開腹手術が施行された結果、Treitz靱帯から10cm肛門側の空腸腸間膜に直径14×10×6cmの弾性硬の腫瘤が認められ、腫瘤は空腸と強固に癒着していた。そのため空腸を15cm合併切除した。一方、病理組織学的所見では嚢腫壁は膠原線維性組織からなっており、一部にリンパ球浸潤がみられ、腫瘤内腔には弱好酸性の漿液性物質とコレステリン析出を認めたが、上皮細胞は認められなかった。以上より、本症例は腸間膜乳び嚢腫と診断された。尚、成人腸間膜乳び嚢腫の我が国の報告は検索した限り、本症例を含め26例と稀であった。
©Nankodo Co., Ltd., 2011