発行日 2011年4月1日
Published Date 2011/4/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2011167770
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61歳男。8ヵ月前より動悸を自覚し、体重減少があり、近医で貧血を指摘された。当科入院時、右上腹部に圧痛を伴う腫瘤を触知し、血液検査では炎症反応の軽度上昇、腫瘍マーカーCEA、CA19-9の高値を認めた。下部消化管内視鏡では肝彎曲部近傍の横行結腸に境界明瞭で辺縁不整な潰瘍性病変を認め、中央部には深い孔があり、他部位への穿通・交通が疑われた。腫瘍の生検病理診断は中分化腺癌であった。注腸造影で造影剤は短絡路を介して横行結腸から上行結腸へ流入し、上行結腸には約5cm強にわたって狭窄を認めた。腹部CTでは上行結腸の肝彎曲部に壁肥厚を認め、横行結腸への短絡がみられた。以上より横行結腸への内瘻形成を伴った上行結腸癌と診断し、開腹術を施行した。上行結腸の腫瘍は横行結腸を巻き込み一塊となっており、肝彎曲部には正常結腸が残存していた。治癒切除可能と判断し、拡大結腸右半切除術、D3リンパ節郭清を行った。上行結腸癌は10×8cm大、2型病変で、潰瘍の中心部は横行結腸に穿通して口径約2cmの瘻孔を形成していた。病理組織診断は高分化腺癌、SI(横行結腸)N1(1/47)、H0P0M0、fStage IIIaであった。術後経過良好で第10病日に退院し、補助化学療法を行い、術後1年3ヵ月現在も無再発生存中である。
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