発行日 2008年3月1日
Published Date 2008/3/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2008148999
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66歳男。排便時出血を主訴とした。大腸ファイバーにてS状結腸に径8mm大のIIa+IIc型病変を認め、表面が不整な陥凹面を有していた。内視鏡下に内視鏡的粘膜切除術(EMR)を施行し、病理組織所見より深達度sm750μmの高分化型腺癌の診断であった。infβ、ly0、v0、cut end:lateral(-)、vertical(-)、budding(-)で経過観察としたが、EMR後1年半経過頃よりCEAの上昇が始まり、EMR後2年経過時の腹部CT、腹部エコーにて肝S7に17mm大の低吸収域を認めた。S状結腸癌の肝転移との診断で右開胸開腹肝部分切除術を施行、術中エコーにて肝S7に1つ、S8に2つ、S6表面に1つの計4個のlow echoic areaを確認し、多発性肝転移であり根治性はないとの判断で可及的に腫瘍核出術(S7、S6)を行った。病理組織所見は前回のS状結腸癌の内視鏡切除時と一致していた。術後経過は良好で、化学療法(TS1+CPT-11)を開始、術後4週目に軽快退院しとなった。現在、外来で化学療法を施行中である。内視鏡治療が行われた深達度sm1000μm以下の大腸癌で肝転移をきたした症例は非常に稀で、検索の範囲において、本邦で過去4件の報告のみであった。
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