発行日 2004年11月1日
Published Date 2004/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2005034234
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80歳男.暗赤色の大量の下血を主訴とした.上部消化管,下部消化管に異常はなく,明らかな出血点を認めなかった.CT,超音波では,膵尾部腫瘍と部分的な脾梗塞を認め,また,膵尾部腫瘍近傍には腸管のガス像がみられた.血管造影では,脾動脈本幹にencasement,造影剤の血管外漏出を認めた.脾動脈をcoilingすると下血は治まった.膵梗塞および膵尾部癌から腸管への浸潤による下血と診断し,手術を行った.膵尾部癌は脾臓,胃体部後壁,横行結腸,横行結腸間膜,および後腹膜に浸潤しており,切除は不能であった.また,広範な脾梗塞を認め,ゾンデ通過部位が膵尾部癌の横行結腸浸潤出血部位であった.術後2ヵ月頃より膵尾部癌胃体部浸潤部位からの出血による吐下血を繰り返し,約3ヵ月後には死亡した.上部消化管および大腸内視鏡検査で出血部位が確認されず,かつ膵尾部腫瘍が存在した場合,膵尾部癌の穿通性結腸浸潤による出血の可能性も念頭に置く必要があると思われた
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