発行日 2003年12月1日
Published Date 2003/12/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2004145215
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70歳男.主訴は左上腹部痛.腹部単純X線所見で左横隔膜下のfree airと,散在する小腸ガスが認められた.腹部CT所見でFree airと横隔膜下,肝下部に中等量の腹水が認められた.心電図所見ではV1~4誘導にST変化を認め,虚血性心疾患の既往が疑われた.検査施行中,意識レベルと血圧が低下しショック状態に陥ったため,上部消化管穿孔・汎発性腹膜炎と診断し,全身麻酔下に緊急開腹術を施行した.腹腔内全体に多量の膿性腹水があり,胃体上部前壁に径8mmの穿孔部が認められた.穿孔部周囲に腫瘤を触知し,進行胃癌の存在も疑われたが,根治的手術はいずれにしろ困難と判断し,大網充填術を施行した.肝・所属リンパ節に明らかな転移は認めなかった.術後は心不全・肺炎等の合併症を併発したが,人工呼吸器等により改善した.病理組織学所見にて高分化型腺癌を認め,III型早期胃癌と診断し再手術を施行した.術後2年3ヵ月の現在再発の徴候なく健在である
©Nankodo Co., Ltd., 2003