発行日 2017年6月1日
Published Date 2017/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2017264355
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症例は75歳女性で、体動時の息切れ、夜間臥床時の呼吸苦を主訴に受診した。聴診で収縮期雑音、胸部X線像で心拡大と胸水貯留を指摘され、弁膜症による心不全を疑い内服薬を処方したが、服薬コンプライアンスが極めて不良であった。精査で高度の僧帽弁閉鎖不全症(MR)を認めた。自宅にて犬猫数十頭を飼育し、非衛生的な環境での生活を続けており、薬剤コンプライアンスも極めて低いことから、人工物を用いた手術は避けるべきと判断し、リング不使用のedge to edge plastyによる弁形成術を施行した。経過は良好であったが、第3病日の心エコーにて僧帽弁後尖のtetheringに起因すると考えられる中等度MRを認めた。軽度左室拡大、左室機能低下に加え、洞頻脈・心室中隔の奇異性運動も認めた。ランジオロール塩酸塩、カンデサルタンシレキセチル、アムロジピンベシル酸塩による保存的加療を開始し、徐々に脈拍・血圧は安定した。ランジオロール塩酸塩をカルベジロール内服に変更した、服薬コンプライアンスも薬剤師の指導により改善を認めた。経過良好で第8病日に軽快退院し、現在もMRの再発は認めていない。
©Nankodo Co., Ltd., 2017