発行日 2016年11月1日
Published Date 2016/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2017078319
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60歳男性。自宅にて突然、左上肢麻痺が出現して他院へ救急搬送された。頭部MRI拡散強調像で右分水嶺領域に高信号域を認め、脳梗塞と診断された。Alteplaseの初期投与が行われたが、血圧と意識レベル低下を認め、アレルギー性ショックと診断、精査加療目的で著者らの施設の脳神経外科に救急搬送された。頭部MRIでは右総頸動脈への解離伸展による前大脳動脈、右中大脳動脈の分水嶺梗塞がみられ、胸腹部造影CTでは右総頸動脈は閉塞していたが、逆行性灌流により外内頸動脈分岐の末梢は描出されていた。以上、これらの所見を踏まえて、本症例はStanford A型大動脈解離と確定診断され、心臓血管外科へ紹介となった。治療はalteplase投与後であることに加え、挿管鎮静下で循環コントロールが容易なため緊急手術は行わず、意識確認後、4日目に手術の施行となった。術中所見では人工心肺を開始し、上行大動脈を遮断後、切開によりsino-tubular junction直上の後壁にエントリーを認め、中枢解離腔をBioGlueで固定して、26mm 4分枝のJ Graft Shield Neoを縫着した。次いで脳分離体外循環を開始し、左鎖骨下動脈分岐直前で遠位吻合して左総頸動脈と分枝を端々吻合後に腕頭動脈内腔を確認し、偽腔内の血栓を可及的に除去してBioGlueで固定、分枝と端々吻合した。最後に太い人工血管同士を吻合して手術を終了した。その結果、術後5日目の造影CTでは右総頸動脈の良好な開存を認め、術後40日目に患者は独歩退院となった。
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