発行日 2016年11月1日
Published Date 2016/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2017078320
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61歳女性。12年前より肥大型心筋症、心房細動と診断されており、50歳時に腎梗塞、58歳と60歳時に脳梗塞の既往があった。今回、61歳時には再度腎梗塞を発症し、いずれも心原性と考えられる塞栓症を繰り返していた。左心耳内血栓を指摘され、加療するも病変は消失せず、CHA2DS2-VAScスコアは4点であった。外科的加療の適応検討のため心臓血管外科へ紹介後、採血ではCrが1.25mg/dl、eGFRが42.4ml/分、BNPが756pg/mlで、経胸壁心エコーでは左室駆出率が50%と軽度の大動脈弁閉鎖不全症と僧帽弁閉鎖不全症が認められた。また、左室壁は中隔15mm、後壁10mmと肥厚がみられた。経食道心エコー(TEE)では左心耳内への血流はわずかで血流速度は5cm/秒以下であり、左心耳内には広範囲にもやもやエコーおよび凝血塊を疑う高エコー域が認められた。更に頭部MRIでは右中大脳動脈領域、左頭頂葉は梗塞後変化であり、右小脳半球にも陳旧性小梗塞が認められた。入院後、TEEを行なったところ、もやもやエコーと左心耳内血栓の残存が確認された。そこで、抗凝固療法をwarfarin potassiumに切り替え、目標PT-INR値を2.5~3.0と一時的に高く設定した。またAPTT>50秒を目標に持続heparinの投与を開始した。1週間後にはCT上で血栓の消失を確認でき、胸腔鏡下左心耳切除術が施行された。その結果、術後経過は良好で10日目に退院となり、1年経過現在、血栓塞栓症の再発は認められていない。
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