発行日 2016年9月1日
Published Date 2016/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2016403001
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60歳女性。安静時に胸背部痛を自覚し近医を受診、急性大動脈解離が疑われ緊急入院となった。CTでは遠位弓部から腹腔動脈上部に偽腔開存型のB解離がみられ、エントリーは左鎖骨下動脈起始部より10cm付近で、解離腔は一部血栓閉塞を伴うが臓器灌流異常は認められなかった。一方、造影CTでは偽腔拡大に伴う腹部大動脈真腔の高度狭窄と、それに伴う下肢血流低下および急性腎不全を呈していた。治療として、腎血流と下肢血流の改善を目的に全身麻酔下に8mmリング付きePTEE人工血管を用いて緊急右腋窩-右大腿動脈バイパス術が施行された。術後、四肢血圧は改善し、利尿剤の投与下で尿量の増加も認められ、クレアチニン(Cr)値も改善した。だが、Cr値の上昇傾向を認め、急性腎不全増悪で持続血液透析濾過法を開始した。しかし、乏尿が遷延し、腋窩動脈-大腿動脈バイパス手術で用いた人工血管径では十分な腎血流が確保できず、第16病日目に準緊急胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)が施行された。術後経過は良好で四肢血圧、腎機能ともに改善し、造影CTでもTEVARによる解剖学的血行再建が確認され、TEVAR施行後7日目に独歩退院となった。
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