発行日 2014年12月1日
Published Date 2014/12/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2015122730
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73歳女性。前胸部違和感を主訴に近医を受診、胸部X線像で右胸腔内へ張り出すように存在する縦隔異常陰影を指摘され、著者らの施設へ紹介となった。所見では胸部単純CTにて前縦隔に内部がやや不均一な長径65mmの腫瘍がみられたほか、胸部MRIではT2強調像で高信号、T1強調像で中-高信号を示し、嚢胞性腫瘍、あるいは嚢胞変性を伴う胸腺腫が疑われた。以後、初診から3週間目の入院時には症状は軽快しており、炎症反応も正常化していたが、血中CYFRA値より胸腺癌の存在も否定できず、診断と治療目的で手術施行となった。術中所見では腫瘍は両側縦隔胸壁との線維性の癒着が認められたが肺への強固な癒着や浸潤はなく、両側胸腺・胸腺腫瘍摘除術を行なったところ、摘除標本の病理所見では肉眼では65mm大の腫瘍が胸腺右葉を中心に存在しており、腫瘍内部の大部分は壊死物質で満たされていた。更にHE染色では腫瘍の大部分が壊死し、壊死組織の中にはわずかにリンパ球浸潤や上皮系腫瘍細胞が認められた。以上より、本症例はcytokeratin(CK)AE1/AE3免疫染色にてtype B2の胸腺腫、正岡分類I期と診断された。尚、術後経過良好で、患者は第7病日目に退院となり、目下、術後6ヵ月経過で再発徴候や筋無力症状などの出現は認められていない。
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