発行日 2014年12月1日
Published Date 2014/12/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2015122729
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55歳男性。既往として慢性膵炎があった。今回、左側背部の腫瘤を自覚、腫瘤が増大傾向で、時々痛みも出てきたため受診となった。胸部CTでは左肩甲骨下角の尾側、広背筋の深部に5cm大の類円形腫瘤がみられ、境界は明瞭で、被膜を有し、内部吸収値は低く均一であった。また、MRIではT2強調像で高信号、T1強調像で低信号を呈し、被膜と思われる辺縁のみが造影され、明らかな浸潤性発育は認められなかった。以上、これらの画像所見から本症例は嚢胞性病変、特に滑膜嚢胞が疑われ、確定診断目的で切除術が施行された。手術は腫瘤直上に約8cmの斜切開をおき、広背筋を露出し、広背筋を筋束にそって分けて腫瘤を露出した。そして、広背筋と腫瘤の間を剥離し、この層にAlexis ウーンドリトラクターMを挿入して視野を展開後、腫瘤と前鋸筋・大菱形筋との間を剥離して広背筋と腫瘤の間に挿入したウーンドリトラクターを今度は前鋸筋・大菱形筋と腫瘤の間の層に挿入して視野を展開した。すると腫瘤は肩甲骨後面に線維性に固着しており、骨性胸郭との剥離は容易であった。腫瘍上縁は白色模様の結合組織となっており、肩甲骨下角の裏側で切離して摘出した。その結果、切除標本の病理所見では滑液嚢胞であった。尚、術後の経過は良好で、患者は術後4日目に退院となった。
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