発行日 2013年7月1日
Published Date 2013/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2013316874
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74歳女性。呼吸困難を主訴とした。心エコー検査にて左室拡張末期径54mmと左室の容量負荷、および50mmHgを超える肺高血圧が示唆された。また、左室駆出率76%と左室壁運動亢進の所見から短絡疾患の存在が疑われた。心臓カテーテル検査を行なったところ、右室から肺動脈にかけてQ2ステップアップがあり、肺体血流比(Qp/Qs)は6.2と著明な左右短絡が認められた。以上より、本症例は胸部大動脈瘤の肺動脈穿破による重篤な左右短絡が急性心不全と肺高血圧の原因となっていると判断し、準緊急的に全弓部置換術および肺動脈穿孔部閉鎖術が行われた。心膜を切開したところ、大量の血性心嚢液が噴出したほか、弓部大動脈全体が紡錘状に拡大しており、肺動脈を上方から圧排していた。そこで、上行大動脈送血に左大腿動脈と右腋窩動脈送血を加え、右房から脱血管を挿入し、人工心肺を開始した。手術は穿孔部を外から圧排しながら中心冷却を行い、大動脈遮断と循環停止を行ない、左総頸動脈と左鎖骨下動脈に内腔からカテーテルを挿入し、完全脳分離灌流とした。そして肺動脈内膜を縫合閉鎖後、近位下行大動脈で断端形成を行い、人工血管を用いて全弓部置換術を行った。以後、第1病日より持続的血液ろ過透析を再開し、第24病日に経腸栄養を開始した。だが、患者は術後第33病日に腹部エコーで大量の腹水の貯留を認め、第34病日目に腸管壊死、多臓器不全、播種性血管内凝固症候群により死亡となった。
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