発行日 2008年3月1日
Published Date 2008/3/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2008148983
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心・中枢神経系の虚血時間短縮と可及的早期再灌流を目指した弓部大動脈置換術の術式を提示するとともに、実際に本術式を施行した2例について検討を行った。術式として、冷却中に上行大動脈を遮断して中枢側操作を行い、続いて超低体温循環停止下で弓部分枝再建術を行った。その間、大動脈遠位端よりバルーン付き送血管を挿入し、下半身への送血を行った。その後、心・中枢神経系への灌流を再開し、遠位側操作を行った。本術式を施行した2例は63歳(症例1)と72歳(症例2)の男性で、各々6.0cm、5.0cmの弓部大動脈瘤を認めた。症例1は陳旧性脳梗塞、虚血性心臓病(左前下行枝:完全閉塞、左回旋枝:75%狭窄)を併い、上記術式に加え、冷却中に大伏在静脈-左回旋枝のバイパスを、加温中に左内胸動脈-前下行枝のバイパスを施行した。症例2は両側内頸動脈の狭窄(右90%、左50%)を伴い、右内頸動脈内膜摘除術を施行後、10日後に弓部大動脈置換術を施行した。症例1、2の総体外循環時間は各々286分、258分、心筋虚血時間は各々99分、48分、脳虚血時間は各々30分、19分、下半身虚血時間は各々115分、103分であった。各々術後2年2ヵ月、1年8ヵ月経過現在、経過良好である。
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