発行日 2013年5月1日
Published Date 2013/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2013269699
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72歳男。約5年前から陳旧性心筋梗塞で薬物治療中であったが、今回、心不全で入院となった。心エコーで重症の機能性僧帽弁逆流とびまん性左室壁運動障害を認め、駆出率は20%であった。Heparin投与を開始したがPLTが低下し、II型Heparin起因性血小板減少症を発症したたため同剤中止の上でargatroban投与を開始した。PLTは回復したものの心不全の改善は乏しく、冠状動脈造影で左回旋枝に99%狭窄を認め、狭心症および重症機能性僧帽弁閉鎖不全症と診断し、argatrobanを使用した人工心肺開心術を施行した。手術は大伏在静脈による左回旋枝への冠状動脈バイパス術、生体弁による弁下組織温存の僧帽弁置換術を行った。人工心肺使用中の活性凝固時間(ACT)は最低282秒、最高380秒で、argatroban総投与量は66mgであった。人工心肺使用終了後もACTは300秒前後に遷延したため、新鮮凍結血漿を投与した。人工心肺使用終了後3時間50分でACTが200秒まで回復したところで胸骨を閉鎖し、手術終了となった。出血量は6170ml、術中輸血は濃厚赤血球24単位、新鮮凍結血漿8単位、濃厚血小板20単位であった。術後経過は良好である。
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