発行日 2014年12月1日
Published Date 2014/12/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2015122714
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68歳女性。左原発性肺癌に対して胸腔胸補助下左肺葉切除後、深部静脈血栓症予防として術中から下肢の間欠性空気圧迫が行われ、あわせて術後は低用量分画ヘパリン5000単位を12時間ごとに皮下注射されていた。しかし今回、第2病日目朝に突然、呼吸困難が生じ、意識状態の悪化にて心臓超音波を行なったところ、肺動脈本幹から両側肺動脈にかけて大きな血栓が認められ、肺血栓塞栓症と診断された。以後、呼吸循環動態の急激な悪化で経皮的心肺補助装置(PCPS)の装着後、心臓血管外科にて開胸下の緊急血栓除去術が施行された。手術は人工心肺下に肺動脈本幹を切開して可及的に血栓を除去した。すると、術後は循環動態は徐々に改善し、肺癌術後第5病日目にPCPSから離脱、肺血栓塞栓症再発予防目的で未分画ヘパリンが持続投与された。だが、超音波所見や造影CTにて両側内頸静脈および下大静脈内に広範な血栓形成が確認され、血液検査では血小板輸血にも関わらず、血小板数の漸減傾向が認められた。以上より、本症例は抗ヘパリン-PF4複合抗体陽性であることからHIT(ヘパリン起因性血小板減少症)が疑われ、未分画ヘパリンの中止に代わって、抗トロンピン薬の投与が行われた。その結果、血小板数は改善したものの、両側内頸静脈や下大静脈の血栓は残存したため、上・下大静脈フィルターを留置してワルファリン投与を開始、癌術後第34病日目に人工呼吸器から離脱して第95病日目に患者は退院となった。
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