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胃大網動脈グラフト(GEA)を用いた単独冠状動脈バイパス術(CABG)を施行した589例を対象に、早期、遠隔期の臨床成績、グラフト開存性及びグラフト機能について調査した。標的血管の狭窄度が75%の98例(75%群)と、90%以上の491例(90%≦群)に分けて検討した。その結果、早期造影所見で、75%群では、グラフト狭窄もやせ現象もない、いわゆる完全開存率は49%にとどまり、5%の症例で閉塞していた。また、40%の症例でやせ現象を呈していた。一方、90%≦群では完全開存率は96%と有意に高く、閉塞は1%のみであった。75%群においてGEAの術中free flowとやせ現象の発生率の関係を検討したが、血流量の高低で差を認めなかった。また、GEAの剥離法の相違に関しても、やせ現象の発生率に差を認めなかった。遠隔期に造影検査を施行した78例のグラフト材料は、左内胸動脈73本、右内胸動脈8本、橈骨動脈38本、大伏在静脈30本、GEAが78本であった。胸部症状は60例に認め、うち36例は実際に冠状動脈或いはバイパスグラフトの狭窄や閉塞を認め、GEAの狭窄・閉塞は11例であった。手術時の標的血管の狭窄度別に早期と遠隔期造影の比較を行ったところ、標的血管の狭窄度75%の症例25例のうち、11例は早期に完全開存であったが、11例中3例は遠隔期にやせ現象を呈した。早期からやせ現象を呈したのは12例であった。狭窄度90%~99%の27例のうち、25例は早期造影で完全開存を呈し、25例中22例は遠隔期にも完全開存であった。完全閉塞の26例のうち、早期に完全開存であった24例は遠隔期でも完全開存であった。GEAの灌流域の大きさ、灌流域の心筋梗塞の有無と開存率に有意差はなく、遠隔期のGEAの血管径は灌流域大で有意に大きく、灌流域の心筋梗塞の有無で血管径に差はなかった。
©Nankodo Co., Ltd., 2008