発行日 2007年2月1日
Published Date 2007/2/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2007114058
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58歳男、胸部異常陰影、左肩痛を主訴とした。高血圧症の既往があり、喫煙歴は40年であった。胸部X線にて左肺尖外側胸膜の肥厚を、胸部CTにて左胸壁に肋骨の破壊像を伴う8×6×2cm大の腫瘍を認め、CTガイド下生検では腫瘍は腺癌であった。末梢肺に発生した胸壁浸潤肺腺癌と診断した。化学放射線療法にて左肩痛は消失したが、画像上腫瘍径は不変であった。開胸したところ肺内に原発巣はなく、肺胸膜に播種巣を認めた。悪性胸膜中皮腫の可能性も考慮し、胸壁合併左胸膜肺摘除術、縦隔リンパ節廓清を行った。主病巣は6×6×3cm大の円盤状の硬い腫瘍で、肋骨と周囲肋間筋に浸潤していた。細胞接着性の強い癌胞巣が硬い線維化内に散在し、一部は腺腔を形成し胞体内に粘液を含んでいた。粘液はヒアルロニダーゼ消化後のアルシアンブルー染色、mucicarmin染色陽性であった。免疫組織化学的にカルレチニンが腫瘍細胞核に強陽性、Ber-EP4陽性で、HBME-1も少数で陽性であった。EMA、MOC-31も陽性であった。低分化腺癌で胸膜直下の微小肺癌が胸壁浸潤したものと診断した。術後、膿胸を合併したが胸腔鏡下醸膿胸膜胼胝摘除術にて軽快した。術後1年の現在、再発所見は認めなかった。
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