発行日 2006年9月1日
Published Date 2006/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2007100279
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
74歳男。入院時、腫瘍マーカーはCEA、SCC、CYFRA、NSEは正常であったがPro GRPのみ60.6(正常値<46)pg/mlと軽度高値であった。胸部単純X線は前縦隔に左肺動脈、肺動脈本幹に近接する充実性腫瘍を認めた。胸部MRIでは腫瘍はT2強調画像において高信号を示し血管系への浸潤は認めなかったが腫瘤内部には線維性隔壁を思わせる低信号域を認め画像上は胸腺腫が疑われた。以上より、胸腺腫もしくはPro GRP高値により細胞肺癌の可能性もあると考え手術を施行した。左胸腔鏡下に腫瘍は前縦隔に存在し一部上葉に浸潤しており左横隔神経は完全に巻き込まれていた。腫瘍生検でカルチノイドの診断を得て胸骨正中切開し腫瘍を含めた胸腺、心嚢、左葉部分、横隔神経合併切除を行った。病理組織所見では円形の核を持つN/Cの比の高い小型で均一な細胞が充実性胞巣を形成し、また胞巣間には血管のよく発達した硝子様の間質が介在していた。Synaptophysin染色およびchromogranin染色は陽性で組織中に壊死が見られないことから定型胸腺カルチノイドと診断された。腫瘍は心膜、胸膜にも広く浸潤し断端陽性が疑われた。術後6ヵ月検査時のPro GRPは19.6pg/mlと正常域に低下し局所再発も認めていない。
©Nankodo Co., Ltd., 2006