発行日 2006年8月1日
Published Date 2006/8/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2006302213
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78歳女.突然の胸痛,胸部圧迫感あり,心胸郭比64%と拡大しており肺血管陰影は増強しCTでは上行大動脈にflapを認め最大径100mmと拡大し,肺動脈を圧排していた.肺動脈主幹部に交通を認め肺動脈穿破が疑われ大動脈-肺動脈の血流は明らかでなかった.以上より,解離性大動脈瘤(DeBakeyII型)の肺動脈穿破と診断し緊急手術を行った.右鎖骨下動脈に10mm Hemashieldグラフトを装着し送血ラインとし,胸骨正中切開にて開胸,右房に脱血管を挿入し人工心肺を開始した.右上肺静脈より左室ベントを挿入し,全例冷却を開始し逆行性心筋保護を行った.上行大動脈を切開すると血管壁は厚く慢性解離でEntryは上行に認めた.大動脈弁閉鎖不全は認められず偽腔から肺動脈にかけて瘻孔を認めポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フェルトにて補強し,マットレス縫合にて閉鎖した.直腸24℃で循環停止し,遮断を解除して順行性選択脳灌流を行い,末梢側を吻合し,中枢側,末梢側ともにPTFEフェルトにて補強し,解離腔はフィブリン糊にて固定した.30mm Hemashieldグラフトを用い上行動脈人工管理置換を行った.人工心肺離脱は容易で手術時間420分,総体外循環時間248分,心停止時間154分,循環停止時間29分,選択的順行性脳灌流時間25分であった.手術終了12時間後に覚醒し麻痺など認めなかった.順調に回復し36日後に独歩で退院可能となった.術後CTにて吻合部仮性瘤や弓部以降の解離腔などなく,良好な形態を示し肺動脈の圧排は解除された
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