発行日 2006年8月1日
Published Date 2006/8/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2006302212
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87歳男.両手術手技を同時に行った最高齢と考えられた.数年前より胸部圧迫が出現し,3ヵ月前から症状が頻回となり,3週前に失神発作があり大動脈弁狭窄と診断された.入院時,脈拍不整,心雑音聴取し胸部X線で心拡大,心房細動を認め,やや貧血ぎみであった.CT所見で,最大径60mmの上行大動脈瘤と最大径45mmの腹部大動脈瘤を認めた.心エコーでは大動脈弁狭窄および閉鎖不全(II度)が認められ,洞管接合部の大動脈径は32mmであった.右冠状動脈,左前下行枝,左回旋枝の狭窄は基部拡大を含む著明な上行大動脈瘤を認め,中等度の大動脈弁逆流がみられた.胸骨正中切開を行い,右腋窩動脈送血,右房脱血にて常温で人工心肺を確立し,大動脈遮断・心停止後,3枝CABGを施行した.次にFreestyle弁(27cm)を用いて大動脈基部置換術を行い,両冠状動脈口をCarrelパッチにしてFreestyle弁に吻合した.その後,Hemashieldグラフトを用いて上行大動脈置換術を行った.人工心肺時間267分,大動脈遮断時間203分,手術時間7時間21分で人工心肺からの離脱は容易であった.病理組織所見では大動脈壁は中膜に粘液変性が目立ち菲薄化し全層にわたって弾性線維が消失しており,大動脈は石灰沈着を伴ったフィブリン様物の沈着が著しく弁尖が変形していた.術後経過は良好で術後14日に心カテーテル検査を施行しすべてのグラフトの良好開存を確認し,リハビリテーションの後,術後19日で独歩で退院した
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