発行日 2004年8月1日
Published Date 2004/8/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2004289046
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71歳女.主訴は労作時胸痛.冠状動脈造影所見で右冠状動脈は左室後壁側枝が完全閉塞していた.左冠状動脈は左前下行枝起始部に99%狭窄を認め,大きな対角枝が存在していた.左内胸動脈を左前下行枝に,大伏在静脈にて対角枝にバイパスする方針で手術に臨んだ.胸骨正中切開にてアプローチした.上行大動脈をエコーにて検索したところ壁はむしろ薄く,動脈硬化性変化を殆ど認めなかった.左内胸動脈と大伏在静脈を採取後,上行大動脈にフェルト付き2-0ネスポーレン糸で二重にタバコ縫合をかけた.メスで十分切開し送血管を挿入したところ,大動脈基部に向かい,たちどころに色調が暗黒色に変化した.心表面のエコーにてflapの存在が判明し,大動脈解離が生じたと判断した.病理組織所見で大動脈壁では粘液変性や弾性線維の断裂~消失が認められた.又,細胞レベルの空泡状変性が全層性に認められたが,明らかな嚢胞性中膜壊死の所見は存在しなかった.術後経過は良好で,造影CT所見でも解離の残存など異常所見を認めなかった.術後25日に独歩退院となった
©Nankodo Co., Ltd., 2004