特集 癌幹細胞の治療抵抗性とその打破
癌幹細胞の低酸素性ニッチ
田久保 圭誉
1
1慶応義塾大学 医学部坂口光洋記念講座(発生・分化生物学)
キーワード:
シグナルトランスダクション
,
腫瘍遺伝子発現調節
,
腫瘍幹細胞
,
神経膠腫
,
造血幹細胞
,
酸素欠乏
,
造血器腫瘍
,
ノックアウトマウス
,
幹細胞ニッチ
,
Hypoxia-Inducible Factor 1, Alpha Subunit
,
Von Hippel-Lindau腫瘍抑制タンパク質
Keyword:
Hypoxia
,
Glioma
,
Hematopoietic Stem Cells
,
Neoplastic Stem Cells
,
Signal Transduction
,
Gene Expression Regulation, Neoplastic
,
Hematologic Neoplasms
,
Mice, Knockout
,
Von Hippel-Lindau Tumor Suppressor Protein
,
Hypoxia-Inducible Factor 1, alpha Subunit
,
Stem Cell Niche
pp.32-37
発行日 2011年12月22日
Published Date 2011/12/22
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幹細胞は自己複製能やストレス耐性,薬剤排出能などの特有の性質,幹細胞性(stemness)を持つ.こうした幹細胞性は幹細胞周囲の微小環境(ニッチ)からのシグナルと,幹細胞固有の転写因子セットによって規定される.正常幹細胞では幹細胞性は組織の生涯にわたる恒常性維持のために必要であり,その破綻は老化や癌化などを誘導する.一方,腫瘍組織に存在する癌幹細胞分画は,このような幹細胞性の作動メカニズムをも利用することで自己複製能や治療抵抗性,あるいは転移能を獲得する.したがって,癌幹細胞を標的とする研究を進める際は癌幹細胞と正常幹細胞,それぞれの維持メカニズムの異同を意識する必要がある.本稿では,ニッチシグナルとしての低酸素環境に注目し,正常および癌幹細胞が低酸素環境において維持されるための分子メカニズムについて解説する.
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