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- Abstract 文献概要
多くのアジア諸国は,日本よりも少子高齢化のスピードが早く,特に認知症患者のケアは社会問題となっている.本研究の目的は,アジアの高齢者施設における認知機能低下者を対象に,BPSDの種類とその有病率を比較し,環境要因やケア要因について比較することであった.日本の3地域(関西,中部,関東),と海外4地域(韓国,ソウル市;中国,広州市;台湾,花蓮市;タイ,チェンマイ市),計7研究機関が国際共同研究に参加した.ケア関連要因として,施設の環境要因(1人当たりの面積など),ケア要因(スタッフの教育レベルなど),ケアの種類や頻度などを収集した.入居者の人口統計学的情報,合併症,処方薬剤の種類と量などは医療記録から抜粋した.認知機能の測定にはMini Mental State Exam(MMSE),認知症の重症度にはClinical Dementia Rating(CDR)を用いた.BPSDの測定にはNeuropsychiatric Inventory-Nursing Home Version(NPI-NH)を用いケアをしているスタッフが評価した.ADLレベルはバーセルインデックス(BI)を用いた.対象者の選定基準は,①認知症と診断されているかMMSE<24,②自力で歩行可能な者であった.倫理委員会は各研究機関と各研究施設で申請し,承認を得た.また各入居者から署名による同意を得た.
計662人が選定基準に適合した.平均年齢は82.6±8.4歳,MMSEは11.0±7.4で認知機能の低い者が多かった.国により,認知症の重症度,ADLの重症度,薬剤使用のパターン,ケアの内容が異なった.認知症患者を対象とした施設では,一般の高齢者を対象とした入居施設と比べ,認知機能が低く,NPI-NHの総合点が高く(BPSDが重度),抗認知症薬や抗精神薬の使用者の割合が多かった.さらにBIによるADLの自立度も低い傾向にあった.排泄の自立度と認知症の重症度とは一般的に関連がみられた.ケアの内容は国によりかなり異なり,さらなる患者の状態とケアの内容の情報が必要であった.本研究は便宜抽出法であったが,今後の認知症ケアの国際比較のための基本データを提供し,今後の研究課題を明らかにした.
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