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Ⅰ.はじめに
1995年阪神・淡路大震災を契機に、「災害への備えの不足」が指摘され1)、これまでの防災訓練の見直しや災害看護学の構築の必要性が認識されるようになった。広域災害・救急医療情報システム、広域搬送システムの構築、災害拠点病院の整備、対策マニュアルの策定、大規模な研修や訓練などハード面の災害対策は、着実に整備されつつある。一方、阪神・淡路大震災の被災経験がある看護師の防災認識はそれほど高いものではない2)、災害看護に対する看護職者の取組状況は低い3)という報告があるように、個人レベルでの「災害への備え」の行動化は、災害対策に関するハード面の整備に追いついていないように思われる。たとえ精度の高い対策マニュアルやシステムを構築したところで、それを使用する人間がうまく使いこなせないと意味が成さない。
このような現状を踏まえ、どのようにすれば各人が災害の備えの行動化が可能になるのだろうか。吉川は人々のリスク認知の特徴を知ることなしに、単に正確なリスク情報を伝えたとしても、人々のリスク認知や行動を変えることができない4)、と述べている。リスク認知とは一般の人々のリスクの捉え方であり、リスクの専門家の判断と異なり、恐ろしさ、未知性、関与者の人数の3つの要素でリスクを判断する5)ものである。そしてこのリスク認知は国民、時代背景、・個人によっても異なることもわかっている。しかしリスク認知と行動に影響する要因に関七ては解明されておらず、リスク心理学領域を中心に現在も検討中の課題である。
このようなリスタ認知と行動との関係を研究することは、災害看護学教育方法を構築する上で有効な手がかりを与えるものと考えられる。しかし、学生の防災意識や行動に影響する要因を明らかにしている研究はほとんど報告されていない。そこで、看護系大学生のリスク認知を主観的確率で求め、災害に対するリスク認知傾向を把握することを目的とした。
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