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I.目的
赤痢は世界各地で発生するが、その発生頻度は地域の衛生状態と明らかに相関する。公衆衛生意識の向上および環境衛生の充実に伴い、わが国における赤痢の発生は激減し、ことに集団発生例はまれである1)。しかし、国際交流が拡大し、特に赤痢流行が珍しくない近隣のアジア諸国との交流が密となり、日本人が海外で感染する事例が増加している。食品を通した輸入感染症の集団感染の発生も予期される。
このような背景の中、1999年伝染病予防法は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に変わった2)。これに伴い、赤痢患者が一様に隔離される事はなくなった。しかし、感染症新法下の現在においても、感染力、罹患した場合の重篤性等に基づく総合的な観点から見た危険性が極めて高い感染症、すなわち“一類感染症”や新たな感染症の脅威に対しては、例外的に建物への措置、通行制限などの措置も適応対象となる。つまり、集団隔離が必要とされることは十分に推測され、これまでの実際の体験から、今後の方略を構築することが重要となる。これまで、このような感染症の集団発生例に対し、わが国の臨床家・研究者は、病理学的影響や疫学的・公衆衛生学的知見について報告を行なってきた3)4)。新井(1997)、石川(1998)、久松(1998)は、実験的手法や少数の慢性的患者の実証研究的手法で、隔離状態における心理的影響を報告している。集団災害における外傷後ストレス障害(PTSD)に関連する神経精神医学的後遺症については、1994年のサリン事件8)9)、阪神・淡路大震災10〜16)、普賢岳噴火17)、ガルーダ機事故18)、鹿児島県北西部地震19)20)などについて、実証研究的手法で報告されている。他方で、集団感染例を人的災害とし、その影響について、実証研究的方法で検討した報告は少ない21)22)。
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