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隔離分娩の風習(2)
小林 茂雄
pp.68-71
発行日 1956年3月1日
Published Date 1956/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201028
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隔離分娩の習性を動物について見るならば,鳥類が産卵する時には巣を作るというように,獣類にあつても一定の安全な場所を選択して,そこで子を産むのである.人間においても原始生活時代にては,外敵に対する防禦と自衞とのために最も安全な場所を選んで仮屋を設け,その内に入つて分娩したものである.鳥類における巣に比較すべきものである.そこで産小屋を作るということは,分娩の安全を期するためであつて,触穢禁忌の思想から起つたものでないことは明らかである.南洋の民族には原始時代から行われた産小屋の風習が,太古時代に我が国に渡来した南洋系の異民族によつて持ち来たされたことを肯定する以上は,之をもつて血穢思想に帰せようとする見解が誤りであることは,容易に理解することが出来ると思う.
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