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へき地におけるケアシステムづくりは看護職の連携で
工藤裕子(北海道枝幸町保健福祉課保健予防グループ主幹)
枝幸町は北海道北部にある農水産業の町で,人口9,200人,高齢者人口28%で広域な地域に住民が点在している.町に訪問看護ステーション(以下ST)がなく開設を試みたが看護師確保ができず断念した.しかし,諦めずに保健師・看護師の協働により再度取組みを行い,開設が実現した.これを契機に始めた看護管理者による「在宅ケア運営会議」が,在宅ケアの推進を目標に掲げ定例化したことでさまざまな課題解決のための推進力となっている.①ST利用者(収益)確保:地区説明会を行うなどSTの浸透に力を注いだ結果,平成20年4月には経営可能数に達した.②入院と在宅のつなぎ:高齢者の退院拒否,調整なしの退院,ターミナルの要望,専門医療機関との連携などについて病院内,在宅の双方向で改善点を話し合っている.③看護師確保:所属枠を超え情報共有を行い地域全体での充足を目指している.④地域リハビリシステムの構築:制度改正による通院リハビリ制限者をSTリハビリにつなげST利用者が一気に増えた.また,ST開設を契機に保健・福祉・医療・介護関係者を対象にリハビリ研修会を開催し実践力をつけてきた.現在,地域全体のリハ体制が構築されつつある.⑤南宗谷難病医療システム(リウマチ外来):町の難病対策によるリウマチ専門外来は,保健師と病院看護師が協働で専門外来を動かしている.⑥糖尿病対策:平成17年度にスタートした国保・保健・病院職員による糖尿病対策(通称プロジェクトE)は連携し活動を継続している.⑦IT活用看護支援システム:札幌市立大学によるITモデル事業へ協力し,へき地医療過疎の当町において新たな支援システムを大学と検討中である.⑧医療連携室の設置:最適な療養環境の提供と医療相談などに迅速に対応するために国保病院内連携室設置に向けて取組みを行った結果,23年4月に開設が決定した.看護職の協働による取組みと成果は多岐にわたり,STを支えるための「在宅ケア運営会議」は地域内それぞれのケアサービスの調整や地域全体をケアする統括機関としての役割を果たしている.地域の限られた資源でも保健師と看護師の連携と協働で新たな地域ケアシステムの創造と発展につながっている.
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