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は じ め に
私は整形外科医ではなく,生物統計学を専門とする臨床疫学者であるため,整形外科専門誌のほとんどの査読者とは異なる独自の視点をもっていると思う.“Peer review” という言葉が示すように,整形外科専門誌のほとんどの査読者は整形外科医である.私は,論文上で報告されている結果が方法論的に正しく導かれたものかどうかについて焦点をあてているため,評価者としての私の視点は,臨床的な関連性やニュアンスを十分にとらえていないこともよくある.
しかし時が経つにつれて,臨床的な問題を理解するようにもなってきた.数年前,共同研究を頻繁に行っている整形外科医から,椅子にもたれて微笑みながら「あなたは整形外科医のように考え始めているね」といわれたことがある.これは個人的にも仕事上でも大きな満足感を与えてくれたが,私が原稿をレビューする方法はかわっていない.
私は,ほかの査読者が考えている方向とは違う考え方をすることがしばしばある.整形外科医の査読者は,整形外科の実臨床をかえる可能性をもつ結論にいきつく壮大なリサーチクエスチョンを評価しているかもしれないが,私は,同じ論文の中に,結論を信頼できなくなるような致命的な研究デザイン上の欠陥を感じることがある.
これまでのキャリアの中で,整形外科および関連分野の多くの有能で勤勉で知的な専門家と一緒に仕事をすることができたことは,私にとって大きな喜びであった.しかし残念ながらこれらのスキルは必ずしも優れた執筆者や有能な科学者になることを意味するものではない.私が編集者(JBJS,HSS journal,Journal of ISAKOS)や査読者(CORR,AJSM,BMJ,KSSTA)として,原稿を査読する際には次の二つの疑問を問いかけている.
・著者は読者に情報を明確に伝えることができているか?
・科学的方法論は適切か?
この2点を同時に行うことができていれば,論文は採択され,掲載されることになる.
私は,過去20年間で2,000本以上の論文を方法論と統計学の観点から査読してきた経験から,著者が犯す間違いの中に一貫したテーマをみつけることができた.本項ではこれらのテーマについて解説したい.
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