書評
質的研究論文作成の優れた指南書
坂下 玲子
1
1兵庫県立大学看護学部
pp.67
発行日 2017年2月15日
Published Date 2017/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201342
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質的研究の重要性はわかっていても,その多様性と奥深さゆえに,どのように研究を進めていけばよいのか,どうしたら研究として成立し,論文として採択されるのか,悩んでいる方も多いと思う。本書は,エスノグラフィー(文化人類学)の手法により「ハレ・ケ・ケガレ」の概念を構築し,わが国の医療人類学の確立・普及に努めてきた波平恵美子氏による質的研究の手引き書の第2版である。本書の対象が,質的研究に取り組みたいと考えている大学院学生や指導を始めたばかりの教員であることには変わりはないが,初版から10年が経ち,その間,質的研究が多くの研究者によって取り組まれると同時に,その課題が明らかになってきたことを受け,内容も構成も深まり,多様な例を盛り込みながら,質的研究の研究手順が丁寧に紐解かれている。
第1章は,質的研究の歴史的,哲学的背景が,現象学的思考の流れとともに紹介され,読者は質的研究の意義と可能性に目を開かされるであろう。
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