書評
看護精神あふれる論文執筆指南の書
佐藤 勢紀子
1
1東北大学高等教育開発推進センター日本語研修室
pp.347
発行日 2013年6月15日
Published Date 2013/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100793
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評者の思い込みかもしれないが,看護師といえば,患者の状態につねに細かく気を配り,その心身を癒してくれる優しくて頼りになる人たち,というイメージがある。そういう意味では,このルールブックは,論文執筆に苦悩する「患者」にとっての「看護師」のような本である。
著者の前田樹海氏は,ソニー(株)での勤務(経営管理業務)を経て,NPO法人在宅ケア協会で訪問看護の現場経験を積み,その後,看護学の学位を取得して看護大学で教鞭をとるに至ったという経歴の持ち主である。一方の江藤裕之氏も,言語学が専門であるものの看護大学での教育経験があり,看護学に関する知識と理解が深い。そのようなお二人によって書かれたこの本は,APAマニュアルに即して書かれた信頼に足る内容といい,「痒いところに手の届く」懇切丁寧な解説といい,目に優しい見やすいレイアウトといい,看護精神がすみずみまで満ちあふれた著作である。看護学の論文や報告を書く必要に迫られながら,執筆上の細かいルールの問題で壁に突き当たり,日々の忙しさの中で書く手が止まってしまっている多くの人々にとって,まさに福音であるといえよう。
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