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Ⅰ.はじめに
医療の進歩とともに,透析歴20年以上の患者は2003年末で14,988人(6.5%)で最長透析歴が37年6か月1)になっている.透析歴20年以上の透析患者は,長期間の透析により腎性骨異栄養症,腎性全アミロイドーシス,心・循環器合併症を併発しながら週3回の通院や社会生活を営んでいる.
春木は,透析歴15年以後を「長期透析期で解決困難な合併症の出現や死と直面する時期」2)と記している.初期の古い透析治療技術から生きてこられた患者は,合併症の影響による身体的な諸症状のためにQOLが阻害され,大きな負担をかかえている.けれども,患者は透析療法によって長期間を生き抜くなかで家族や周囲の理解と協力を得て,社会適応する生活行動にエンパワメント(個人が自己の生活をコントロール,決定する能力を開発していくプロセス)を活用して,透析医療と共存できるように努力していた3).
Orem(オレム)4)は,セルフケアの重要性と健康逸脱へのセルフケア看護には医療知識をケアに適応する必要があると述べている.透析患者は長期間にわたりセルフケアとして自己管理を行い,合併症の身体症状と共存するなかで,自分なりの生活スタイルを築いている.
透析歴20年以上の患者の身体症状については,医学的見解5,6)を述べたものや,アンケート調査2)で合併症の出現状態や症状などにふれているが,患者が合併症をもちながら日常生活を送るなかで,身体症状のとらえ方について述べたものはみられなかった.そこで,今後も増加する長期透析患者の身体症状のとらえ方を明らかにすることで,透析療法と共存している患者に適した援助方法が見出されると考え,取り組んだ.
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