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緒言
透析治療の目的は,「生命の維持」とともに「より高いQOL(quality of life)を保つ」ことである1)ことは疑いのないことである.その目的達成のためには,セルフケアは必要不可欠であるが,現実には困難をきたすことが非常に多い.なぜなら人間は,本来自ら考え行動するものであり,たとえ病気になってもそれは変わらないものである.つまり,いくら医学的に正しいことだからといって行動を押し付けても,本人がそれを正しく理解し心から納得しない限り,受け入れてもらえないからである2).また患者のなかには,セルフケアの重要性は認知しているが,その重要性を否認することで,自己管理ができない自己に対する不安や恐怖を打ち消している人たちがいる3).つまり,医療者は,セルフケアをうまくできない,あるいは拒否している患者には,それぞれの理由があることを知る必要がある.
その理由を知らずに(わからずに),医療者は患者へセルフケアの指導に当たる際に,しばしば指導内容に厳守すること(コンプライアンス)だけを求める.「私の指示を厳守し,(セルフケア)行動を変えることが,あなたには絶対よい結果をもたらすのだから」と信じている4).しかも,この方法は結果的に「あなたが自分で頑張るしかない」,ひいては「しょせんは他人事で,私(医療者)には関係ない」という印象しか与えないことになる5).これでは,いくら熱心に「指導・教育」を行っても無効であるのは当然と思われる.またセルフケアの“セルフ”は患者自身という意味ではあるが,このセルフケアがうまく機能するためには,患者のせいにするのではなく,医療者側のほうが工夫する必要があると考えられる.
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