特集 産褥期精神障害の臨床
出産後の精神症状のとらえ方
奥野 洋子
1
1初石病院・精神科
pp.766-770
発行日 1985年9月25日
Published Date 1985/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206719
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はじめに
出産後には精神障害が高頻度に発生することは,古くから知られている。本多ら4)は産褥期に発病し入院を要した精神障害の頻度について諸家の報告を通覧し,1,000回の出産につき1.0〜4.6回と述べている。しかし軽症例も含めるとさらに高率になるといわれる。たとえば抑うつ状態の頻度は,全出産例の10%前後から20%前後という報告が多く1,7,10,11),さらに,マタニティーブルー(maternity blues)と呼ぼれる,涙もろさを中心とするきわめて軽症で一過性の抑うつ状態の頻度は,欧米では1/2〜2/3にものぼるとされている8,11)。最近わが国でも実態調査が行なわれ,面接による調査では16.1%9),アンケートによる調査では4〜5割と報告されている3)。
また周知のように,産褥期精神障害は単一の疾患ではない。高橋13)は産褥期精神障害を①産後軽うつ状態(maternity blues),②神経症的状態,③非定型精神病状態,④狭義の精神病状態(精神分裂病や躁うつ病の初発,再発)に分類している。本多ら4)は①神経症群,②抑うつ群,③分裂症群,④器質・錯乱群に分けている。これらの中で産褥期精神病に比較的特徴的といわれるのは,非定型精神病状態やアメンチアと呼ばれる状態とされている5,13)。
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