第26回日本糖尿病教育・看護学会学術集会報告 教育講演1
糖尿病におけるスティグマとアドボケイトとしての支援—他者への「言いづらさ」をふまえて—
黒江 ゆり子
1
Yuriko Kuroe
1
1甲南女子大学大学院看護学研究科
1Graduate School of Nursing, Konan Women's University
pp.79-83
発行日 2022年3月31日
Published Date 2022/3/31
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はじめに
現代社会において,慢性の病い(chronic illness)とともに生きるということは,決して珍しいことではなく,私たちの多くは,さまざまな病気とともに毎日を過ごしている.
そして,そのような中で自分の病気のことを他者に話そうとすると,そこには思いのほか難しさが存在することに気づかされる.勇気を振り絞って伝えた結果,病気のことを根掘り葉掘り聞かれたり,自分の名前が呼ばれるとその後に病名がついてきたり,暴飲暴食をしたから病気になったと思われたり,あるいは居場所がしだいになくなって職場を離れたり,実にさまざまな事態に直面することも多い.
「本当に親しい人には言えないっていうか...糖尿病で血糖値が高いっていうのは,...本人が不摂生をしているような印象がすごくあるので,...そういう病気なんだなっていうのは思いますね.発症した後の治療は本人の意思の力っていうのがすごくあるじゃないですか.そうすると,自分がやっぱり弱い人間だからそうなったっていう負い目を感じちゃうんですよね.」とAさんは語る(河井,2011).
病気と日々どのように生きているか,そしてその中でどのような苦悩や思いを抱いているかを他者に伝えることは,それほどに難しいことなのである.特に,病気に対する特定の見方が社会に存在し,それに遭遇した経験をもつと,その後は他者に伝えることが一層難しいものとなる.
本稿では,糖尿病におけるスティグマとセルフスティグマがなぜ現われるのかをふまえ,支援のあり方を考えてみようと思う.
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