焦点 慢性の病いにおける他者への「言いづらさ」─ライフストーリーインタビューは何を描き出すか
ライフストーリー解釈
1.7つのライフストーリーに描き出された他者への「言いづらさ」
黒江 ゆり子
1
,
寳田 穂
2
,
市橋 恵子
3
,
森谷 利香
4
,
中岡 亜希子
4
,
古城門 靖子
5,6
,
田中 結華
7
,
河井 伸子
8
1岐阜県立看護大学大学院看護学研究科
2大阪市立大学大学院看護学研究科
3京都南病院地域連携室
4千里金蘭大学看護学部
5東京医科歯科大学医学部付属病院看護部
6東京医科歯科大学医学部付属病院看護部リエゾン精神専門
7大阪府立大学看護学部
8千葉大学大学院看護学研究科
キーワード:
ライフストーリー
,
言いづらさ
,
慢性の病い
,
インタビュー
,
生活
Keyword:
ライフストーリー
,
言いづらさ
,
慢性の病い
,
インタビュー
,
生活
pp.298-304
発行日 2011年6月15日
Published Date 2011/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100530
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はじめに
前稿において紹介した7つのライフストーリーは,インタビューにおいて語られた内容をそれぞれの聞き手がライフストーリーとして描き出したものであるとともに,描き出されたそれぞれのライフストーリーは聞き手によって語り手に伝えられ,語り手による確認が行なわれたものである(Atkinson, 2002)。ここにおける語り手と聞き手の関係は即時的なものではなく,数か月から数か年に及ぶ相互作用を通して築かれた関係であり,本研究においてはそのことが1つの重要な要素となっている。そのような関係だからこそ語られたストーリー,すなわち,Buber, M. が指摘するような「二人して語る(Zweisprache;対話)」ことによってこそ示されたストーリーであるといえる(黒江,2005)。
これらのライフストーリーには,慢性の病いとともに生きようとするときに遭遇する他者への言いづらさが多様な姿で包摂されている。そこで本稿においては,それぞれのライフストーリーに包摂されている他者への「言いづらさ」について,目に見えるものとするための試みを行なってみようと思う。
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