焦点 慢性の病いにおける他者への「言いづらさ」─ライフストーリーインタビューは何を描き出すか
ライフストーリー解釈
2.「言いづらさ」は何を意味するのか
寳田 穂
1
,
黒江 ゆり子
2
,
市橋 恵子
3
,
中岡 亜希子
4
,
森谷 利香
4
,
古城門 靖子
5,6
,
田中 結華
7
1大阪市立大学大学院看護学研究科
2岐阜県立看護大学大学院看護学研究科
3京都南病院地域連携室
4千里金蘭大学看護学部
5東京医科歯科大学医学部附属病院看護部
6東京医科歯科大学医学部附属病院看護部リエゾン精神専門
7大阪府立大学看護学部
キーワード:
言いづらさ
,
理解
,
ライフストーリー
,
慢性の病い
Keyword:
言いづらさ
,
理解
,
ライフストーリー
,
慢性の病い
pp.305-315
発行日 2011年6月15日
Published Date 2011/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100531
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はじめに
自らの感情や体験を語ることの治療的な意味については,力動的精神療法やナラティヴ・セラピー,セルフヘルプグループなどの実践から明らかとなっている。しかし,慢性の病いをもつ人のライフストーリーには,その病いに関連した「言いづらさ」を伴うような語れない体験が含まれている。病いに関連した感情や体験を「言わない」「言えない」「言いたくない」といった体験には,何らかの「つらさ」が包含されているのではないだろうか。
「重い病いを患う人々は,身体ばかりでなく,その声においてもまた傷ついている」(Frank, 1995/鈴木訳,2002, p.4)のであるならば,声もまたケア対象となる。「言いづらさ」もまた,傷ついた声の現われかもしれない。しかし,語られなければ,気づかれることもない。
そこで本稿では,インタビューで語られた内容および各聞き手によって描き出された7つのライフストーリーのうち,Eさんを除く6つをもとに,「言いづらさ」と関連するような体験は何を意味しているのかという視点で分析し,「言いづらさ」を伴う体験が意味することについて考えたい。
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